けいれんを起こした園児の話し

一人の子から学んだ連携や協力の大切さの話

保育園は子供の面倒を見るだけでなく、子供の命を預かっているということを自覚する場面に遭遇することも少なくありません。

ただ、そのような時も一人では何もできません。周りの先生の協力や保護者の方の協力が不可欠です。

何か一つでも欠けると大きなけがや事故になってしまいます。

病気も同じです。

子供の様子をよく見ていることで、ちょっとした違和感や兆候に気づくことができ、情報を共有することで、大事に至らないこともあります。

ただの風邪?

ある日1歳児のクラス担任から「熱のある子供がいるので見て欲しい」という連絡が事務所に来ました。医務室に連れてきて熱を測ると38度5分。

しばらくは玩具で遊んでいましたが、簡易ベットを用意して横にしてあげるとすぐに眠り始めてしまいました。

保育園ではSIDS(乳幼児突然死症候群)防止のため10分ごとに呼吸等の様子を確認するのですが、その時は熱も高かったので看護師と交代で様子を見続けていました。

しばらくすると、手足が定期的にピクピクと動く様子が見られるようになってきました。最初熱性けいれんを疑いましたが、この時は眠っていたので判断しづらい状況でした。(通常熱性けいれんの場合、遊んでいたりする時に突然意識を失ったりします)

その後徐々に痙攣(けいれん)する回数が減っていき、次第に普通の状態になっていきました。

1時間ほどしてお母さんが迎えに来たときは37度前半くらいまで熱が下がっていましたが、念のために病院で受診してほしいことと、途中に起きた痙攣の様子も病院で言っておいて欲しいことを伝えておきました。

翌日、その子は熱もなく機嫌も悪くない様子だったそうなのでいつも通り登園してきました。

受診もしてくれたそうで、病院では普通の風邪と診断されたそうです。痙攣に関しても実際に見ていないので判断が付かず、とりあえず様子を見てくださいとのことだったそうです。

2回目

最初の痙攣からしばらくは何もなく過ごしていました。

2週間ほどたったある日。その日は朝から少し熱が高めで、ボーっとしている時間が何度かありました。

給食時間になると徐々に熱が上がってきたということで、前回と同じように医務室に連れてきました。前回の事もあるのでこまめに熱を測っていると、急に39度近くまで熱が上がってきて、しばらくするとまた痙攣が始まりました。

今回は痙攣の度合いも前回のような「ぴくぴく」、という感じではなく、「びくびく」という少し大きめな痙攣でした。

時間も、痙攣が1~2分くらい続き間をおいてまた痙攣が始まるという、明らかに熱性けいれんの症状でした。

幸いなことに今回も早めに意識が戻り、熱も37度後半くらいまで下がっていきました。

二度続いたということもあり、病院の方でも血液検査をし、後日抗けいれん薬(ダイアップ座薬)を処方してくれるとのことでした。

連携と協力

それから一週間後。その子は三たび医務室へ運ばれてきました。

今回は給食を食べているとき急に動かなくなっていて、熱を測ると39度近くまで上がっていました。今までの事もあり、先生たちが注意してその子の様子を見ていたおかげで早めに気付くことができたそうです。

運ばれてきたときは既に意識がなく白目をむいたような状態でした。ベットに寝かせしばらくすると痙攣が始まりました。

今までよりも症状が重く、痙攣は5分近く続き口からは泡のようなものが出て呼吸が苦しそうになり、口の周りが青紫色に変るいわゆるチアノーゼが出る状態でした。

チアノーゼは、血液中の酸素の不足が原因で、皮膚が青っぽく変色することです。

タイミングが悪くこの日は研修のため看護師が不在の日でしたが、やはり今までの事があったので、熱性けいれん対処のマニュアルを作成してありました。

無理に呼びかけない・嘔吐物が詰まるといけないので横向きに寝かせる・痙攣の回数と何分続いていたかを記録するなど細かくまとめていたので、残ったスタッフで落ち着いて対処できていました。

今回は痙攣している時間も長かったので救急車を呼びました。救急隊員の人が着た後も瞬く意識が戻りませんでしたので、近くの病院まで運んでもらうことになりました。

病院に着いた後は熱が下がったようで意識も戻り、お迎えに来たお母さんと無事に家に帰ったそうです。

この子はその後も何度か同じように急に熱が上がったり、意識がないようなボーっとした状態になることもありましたが、注意して見ていこうという先生たちの意識と状況ごとの細かいマニュアルもあって、園内では痙攣をおこしたり救急車を呼ぶ状況にはなりませんでした。

hwingral著