保育所で働く人々
保育所には保育士以外にも様々な職種の人々が働いています。
子どもが病気の時の病児保育や、薬を飲ませる必要がある子どもへの対応ができる看護師。
栄養バランスの取れた食事の提供や、アレルギーの配慮の必要がある子どもたちへの対応など、子どもたちの食育に直接携わる調理員や栄養士。
保育士だけでは対処しきれない事務仕事を任される事務員。
その他にも保育所によって様々な職種の人々が配備されています。
その中でも、夫婦共働きや核家族化が進み環境の多様性が求められる昨今、かなり注目されている職種に保育ソーシャルワーカーという仕事があります。
保育ソーシャルワーカーとは?
ソーシャルワーカーとは、生活するにおいて問題や課題を持っている人たちに対して相談や支援を行う相談員の意味があります。
保育ソーシャルワーカーは、その中でも保育専門の相談員。
子どもの発達や子育てに関する相談、子どもたちの家庭環境や子育てに携わる保護者の悩み(家庭内暴力やDVなど)の相談にも応じます。
保育所はあくまで保育所内での子育てに限定されており、家庭内での子育てに関することまで介入するのは難しいと思う保育士が多いです。
しかし子育ての大部分は家庭内のことで、「悩み事はあるけど相談して良いのだろうか?」「家庭の問題なので相談しづらい……。」と、相談したいけどできないと思っている保護者はたくさんいます。
保育ソーシャルワーカーは、そのようなあらゆる子育てに関する相談を受け付けており、相談相手の少ない保護者たちの強い味方になるでしょう。
主に保育士の資格を持っている人が同時に保育ソーシャルワーカーの資格を取る場合が多く、保育所に欠かせない貴重な存在になりつつあります。
家庭内の問題もしっかりサポート
ある家庭の相談は、「仕事が忙しくて子育てに自信がなくなっている。」というものでした。
その家庭は夫婦共働きで、子どもの送り迎えはほとんどお母さんの役割でした。
毎日慌ただしい様子のお母さんに一度保育所から、「旦那様と子育ての役割分担について話し合われていますか?」と聞いたことがありました。
その時は、「はい、でも旦那も忙しいので私が頑張らないといけないんです。」と、詳しく語ろうとはしていませんでした。
しかしある送り迎えの時、「いつもよく頑張られていますね。」と、保育士が声をかけたことがありました。
すると急にそのお母さんの目から涙が溢れて、「実は……。」と、家庭内で起きていることを、少しずつ話し始めました。
実は旦那からモラハラを受けているかもしれないというそのお母さん。
「子どものために頑張るのは当たり前。」「子育ては妻の仕事。」
と、旦那は一切子育てに参加してくれないそう。
お母さんが義両親に相談した際も、「息子の世話になっているんだから。」と、まったく注意をしてくれないようで、誰も味方なんかいないと嘆いていました。
「もう子育てにも自信が持てない。」
そう話すお母さんは、精神的にもだいぶ参っているようでした。
このような問題は今の世の中では頻繁に起こっていることで、保育ソーシャルワーカーに寄せられる問題の中でも多いものになっています。
しかし、家庭内の問題だからと外部に相談することをためらう人も多く、今回のような形で問題が発覚するのは稀なことだそうです。
保育ソーシャルワーカーの仕事は、「支援が必要な家族をサポートし、子育ての環境をよくすること」です。
そのために、関連施設との連携は保育ソーシャルワーカーの重要な役割の一つです。
幸いにもその保育所には保育ソーシャルワーカーが滞在しており、子育て支援センターや女性相談所などと連携を取り、旦那さんにも子育てセミナーなどへの参加を促し、家庭内での子育ての負担を分散するためのサポートが進められました。
親の孤立を防ぐ大切な仕事
保育ソーシャルワーカーに寄せられる相談は多岐にわたります。
その相談の種類は家庭の数だけあり、その一つ一つに柔軟に対応する必要があります。
今回のような家庭内のモラハラでの相談はもちろん、家庭内暴力を伴う緊急性の高い相談が寄せられることも珍しくありません。
コロナ禍で在宅時間が多くなりがちな昨今、そのような問題が多くなっている一方、「相談する相手がいない。」「相談してもいいのか悩む。」と、悩んでいるにもかかわらず外部に頼ることのできない人が大勢います。
子育てに悩む人たちが社会から孤立しないために、保育ソーシャルワーカーのような気軽に相談できる相手がいる環境が、今最も必要なものだと思います。
tanuki著